コラム

2016年以前のコラム

■2017年10月23日 「アレルギー・好酸球研究会2017」が開催されました

 10月21日土曜日、東京千代田区の学術総合センターにおいて、アレルギー・好酸球研究会2017が開催されました。本研究会は1980年代後半に当時の獨協医科大学アレルギー内科福田健先生が米国メイヨクリニック医科大学ご留学から帰国され、日本に好酸球研究の技術をもたらしたことに端を発しております。そして当時同科教授であられた牧野荘平先生らによって設立された全国規模の学術集会です。80年代当初はアレルギー疾患での好酸球が「悪玉」として大変に注目された時期であり、好酸球に特化して、また製薬企業の全面的後援にて開催されていましたが、2013年以降は民間移行し、筆者が代表世話人となって埼玉医科大学アレルギーセンターが事務局として汗をかかせていただき、広く「アレルギー性炎症」をテーマとした学会形式の研究会として発展してきております。
 今回の会長は千葉大学アレルギーリウマチ内科教授の中島裕史先生でした。一般演題25(すべて口演)、特別講演が2題で盛大でかつ華やかな学術集会となりました。埼玉医大アレルギーセンター勢といたしましては小児科・総合診療内科・呼吸器内科のスタッフが参加いたしました。
 小児科の植田穣助教は、生活環境中アレルゲンとして知られる家塵ダニが、実はアレルゲンとしての感作状態とは関係なく、直接的に好酸球を活性化しえることを発表されました。

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 これはいわゆる自然免疫反応に属する活性化であって、ダニに感作されていなくとも!喘息などのアレルギー疾患患者では家塵がたまらぬような環境指導が重要であることを示唆する貴重な医学情報でした。同先生はその後の他大学からの演題などに対しても活発に質問などをされ、埼玉医大小児科のこの分野におけるサイエンスでのプレゼンスを示す活躍ぶりでした。 総合診療内科の野口哲助教は、昨年米国アレルギー学会雑誌に発表された同先生の博士論文である、細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンによる好酸球活性化作用について、これがβ2刺激薬ホルモテロールで抑制がかかることを発表されていました。呼吸器内科の家村秀俊助教は先日のインターアズマ(国際喘息学会)で発表された内藤恵里佳助教と埼玉医大での同級生で、本学を卒業されてまだ4年目の新鋭です。呼吸器内科杣知行准教授の御指導によって、日本人における好酸球型重症喘息のプロファイリングについて発表され、とくに末梢血好酸球数が高値でなおかつ呼気NOも高値である症例では、喘息急性増悪の頻度が極めて高いことを示される、臨床的に非常に有意義なご発表内容でした。質疑等もまだ4年目とはとてもおもえぬ落ち着きぶりでした。

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 さて本学会では小生の師匠である、米国の超大御所・ウイスコンシン大学アレルギー科のWilliam W Busse教授と、我が国の誇る自然免疫研究の第一人者であられる、理化学研究所の研究担当理事であって前慶應大学免疫学教授の子安重夫先生という、ふたりの超ビッグネームの巨匠に特別講演を頂戴いたしました。Busse教授は好酸球型重症喘息の基礎と臨床について御講演してくださり、そのなかでとくに好酸球増殖・活性化因子であるIL-5の意義、またとくに最近注目を浴びていてご自身もNature誌にレビューを書かれている、活性化好中球との相互作用などにつき、大変クリアーにお話をしてくださいました。子安先生は、自然リンパ球とくに2型自然リンパ球(ILC2)の意義を中心にご講演をしてくださいました。同研究所の茂呂和世先生また共同研究者の慶応大学呼吸器内科加畑広樹先生などのお仕事を中心に、ILC2の活性化機構あるいはとくにステロイド抵抗性の獲得機序等々について、我々臨床医にもわかりやすく解説していただき、大変によい勉強をさせていただきました。なお同日夜にはこの学術集会の裏方である、当アレルギーセンター内科系スタッフにて、Busse先生をお囲みする慰労会を開催し、サイエンスの話題中心に楽しいひと時をすごせていただきました。

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 昨今、製薬企業さんの諸事情などによって、かれらのスポンサーシップによって成立していた多くの医学研究者向け研究会が消失いたしてきております。本研究会は前述いたしましたように当アレルギーセンターに民間移行してもなお、全国のこの分野の研究者みなさまの熱意に支えられ、医師主導型の学術集会としてここまで運営を続けてきて来られていることには、「学問の神」へ感謝を捧げられずにはおれません。
 来年の本研究会は2018年9月22日土曜日に、同じ学術総合センターにおいて、日本大学医学部分子細胞免疫アレルギー学の岡山吉道先生を会長として開催されます。このコラムをご覧くださったかたで、好酸球をふくめた「アレルギーの基礎・臨床研究」にご関心のある先生におかれましては、HP https://www.sec-information.net/eosinophils/data/announce.html などをご参照のうえ、ぜひご参加を御検討頂戴できればありがたいものとおもっております。(文責:呼吸器内科 永田真)

■2017年10月10日 国際喘息学会(インターアズマ)日本北アジア部会が開催されました

 10月5日,6日の両日,熊本市にて第27回の国際喘息学会(インターアズマ)日本北アジア部会が開催されました。会長は前・熊本大学呼吸器内科教授の興梠博次先生でした。埼玉医大アレルギーセンター勢といたしましては呼吸器内科・小児科のスタッフが参加させていただきました。
学会前に開催されました役員会には小児科徳山研一教授と筆者呼吸器内科永田が出席いたしました。席上,来年度のインターアズマは日本北アジア部会のみとしてではなく,東京で4日間にわたって世界大会として日本が担当して開催されることが報告されました。欧米からも多くの参加者があることが期待されます。
 さて本学会では香港のLeung教授の招請講演,興梠会長のPresident lectureに続きまして,特別講演1として筆者が「Is allergen-immunotherapy necessary for management of asthma?」のタイトルで講演させていただきました。

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 現在の薬物療法では喘息が根治できないことが判明した今,アレルゲン免疫療法にかかる期待は大きいものがあります。日本では欧米や韓国に数十年遅れましたがようやくダニアレルゲン免疫療法が施行できるようになり,今後の普及に当センターとしても尽力してまいりたいと存じます。日本アレルギー学会が発行しているスギ花粉症とダニアレルギー(喘息,鼻炎)についてのふたつの「アレルゲン免疫療法の手引き書」は埼玉医大アレルギーセンター勢が主力で作成させていただいてもおります。講演のラストはいつものように本学キャンパスの写真をつかって締めくくらせていただきました。
 ランチョンセミナーでは英国サザンプトン大学のPeter Howarth教授が重症喘息の病態についてとくに免疫学的・分子遺伝学的面から豊富な情報を披露してくださいました。なおHowarth教授はそのまま10月10日には埼玉医大においでくださり,臨時特別アレルギーフォーラムとして御講演をしてくださることとなりました。
 午後の一般演題のポスターセッションにおいて,呼吸器内科の内藤恵里佳助教,内田義孝助教,杣知行准教授がそれぞれ発表されました。

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 内藤恵里佳助教は卒後まだ4年目ですが,アジア部会とはいえ早くも国際学会デビューです。受け答えも立派なものでした。本学卒業生でもあり,本学学生などは身近な先輩の活躍をお手本にしていってほしいものとおもいます。内田義孝助教は本年度春の米国アレルギー学会(AAAAI)ではすでに本場英語圏でのoral presentationまで経験されておられ,場数を踏んでおられるからか,非常に落ち着いた発表ぶりでした。現呼吸器内科の医局長でもありさすがの貫録(?)でした,このおふたりはそれぞれ喘息の気道炎症病態についての臨床研究でのご発表で,杣知行准教授が指導されたものでした。杣准教授は翌6日朝には一般演題口演の座長もご担当されました。難しい演題がならんでいましたが堂々とさばいておられました。
 6日午後には昨年の韓国アレルギー学会会長として,筆者を講演者として同国にお招きくださった,ソウル大学のSang Heon Cho教授が特別講演をしてくださいました。高齢者喘息についてのおはなしでしたが,社会の高齢化に伴い韓国でも大きな問題となってきていること,若年者と比較して免疫学的背景あるいは炎症病態などに差異があること,治療に難渋する場面が多いことなどを,アジアの喘息研究のエースのおひとりとして素晴らしい御講演内容でまとめておられました。
 前述いたしましたように来年の本学会は世界大会として日本が当番国となっての開催となります。当センターからも小児科・内科が力をあわせ,埼玉医大の,そして日本の喘息・アレルギー研究の力強さを示して参りたいものとおもっております。(文責:呼吸器内科 永田真)

■2017年6月30日 第50回アレルギーフォーラムが開催されました。

 2017年6月22日夕刻に、本学本院キャンパス第4講堂にて第50回アレルギーフォーラムが開催されました。梅雨のじめじめした空気とは裏腹に、大多数のみなさまにご参加いただき熱気あふれる勉強会となりました。
 特別講演は、慶應義塾大学医学部呼吸器内科専任講師の福永興壱先生より「重症喘息について臨床・基礎から考える」というテーマで御講演を賜りました。
 まず、本邦の気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の潜在患者数はそれぞれ約800万人、約530万人ととても多いものの、医療機関で実際に治療を受けている患者数は少ないと考えられるという現状についてお話しいただきました。広く知られている通り、吸入ステロイド療法のガイドラインによる提唱と普及に伴い、気管支喘息患者の救急受診は減少していますが、それでも多くの方が、苦しい思いをしていらっしゃるにもかかわらず、医療機関を受診されていないという事実に大変驚きました。また、実際に気管支喘息の診断が正しいものかどうかを常に念頭に置く必要があるということを、実例をもとにお話しされていました。また、気管支喘息患者のなかの約1/3の方が、症状が改善したのちに吸入ステロイドを中止してしまうとのことで、これは実際臨床の現場で患者さんにうまく説明が行き届いていないということを示唆するもので、ひとりの呼吸器内科医として筆者も責任を感じました。ついで重症喘息についての研究のなかで御高名なKeio-SARP(Severe Asthma Research Program)についてご説明いただきました。もともと、気管支喘息という病気はさまざまなフェノタイプがあり、そのフェノタイプ別で治療を考えていくというオーダーメイド治療をしていこうという見解があり、当アレルギーセンターなどで積極的に行っているアレルゲン免疫療法もその一端であります。そのフェノタイプを考えるうえで重症喘息患者を色々な臨床像から分類するという欧米のSARP研究があり、それをもとに慶應義塾大学グループで行っている御研究です。またAERD(Aspirin-excerbated respiratory disease)について、そして好酸球性副鼻腔炎の患者の鼻茸中の好酸球を用いた網羅的脂質解析を行い、局在における脂質メディエーター産生のパターンに多様性があるのではないかというお話をされました。脂質メディエーターのなかでもプロテクチンD1という好酸球で産生される物質に着目されており、これは抗炎症作用を有しますが、重症喘息患者の好酸球はプロテクチンD1をはじめとする15-LOX products産生が減弱していると思われるとのことでした。そしてアレルギー疾患の近年のトピックスである抗体製剤についてのお話があり、最後のtake home messageとして、症状が残っていることをきちんと医師に伝えられる患者は全体の16%しかいないというAWARE studyについてご説明いただき、患者さんから情報を引き出すことの難しさや大切さを痛感させていただきました。
 慶應義塾大学医学部においてBest Teacher Awardを受賞された福永先生ならではの、基礎研究のお話がありつつ、若手医師や研修医にとってもとてもわかりやすく大変勉強になる御講演で、あっという間に閉会となってしまいました。素晴らしい御講演を賜った福永興壱先生へこの場をお借りして感謝を申し上げます。
(文責 呼吸器内科 宮内幸子)

■2017年2月13日 アレルギー週間市民公開講座2017を開催しました。

 当センタースタッフが中心となり、公益財団法人日本アレルギー協会が主催する2017年度のアレルギー週間市民公開講座が2月4日土曜午後に開催されました。今回の会場は、当大学病院にとっては近接市であって、いわゆる医療圏のなかにある坂戸市の、坂戸駅前集会施設でありました。坂戸市はちょうどこの時期に「スギ花粉飛散量日本有数の地?」となることで全国的にも有名で、とくにスギ花粉症のかたはおそらくみなさんがとても憂鬱な気分になられているのではないかとおもわれました。気管支喘息や食物アレルギー、またスギ花粉症を含むアレルギー疾患は、正確な専門的管理・治療をおこなえばかなりの成果をあげることができますが、日本では専門医が少ない現状があります。そして厄介なことには、標榜自由制度のためにアレルギー専門医でないどころか、日本アレルギー学会員ですらない医療機関がアレルギー科を標榜していたりして、混乱に拍車がかかっています。市民講座の大きな意義はこういう患者さんに正しい知識をもっていただき、救済につなげることだとおもいます。そういった視点でまずは企画・司会担当の筆者がオープニングリマークスを述べさせていただきました
 そののち、「スギ花粉症」については埼玉医科大学病院耳鼻科客員教授の上條篤先生に、根本療法であるアレルゲン免疫療法についての解説をふくんだ御講演をしていただきました。次いで、「気管支喘息」については当センターOBの現・埼玉県立循環器呼吸器病センター医長の高久洋太郎先生が、各種の吸入ステロイド療法を中心とした薬物管理の重要性を含んだお話をいただきました。そして「食物アレルギー」につきましては埼玉医科大学小児科教授の徳山研一先生から、各種の臨床病型やそれぞれの注意点などをふくんだ丁寧な講義をしていただきました。それぞれのエクスパートの先生がたから市民向けのご講演を頂戴した次第で、いずれも、大変に好評でありました。
 聴衆のみなさんには15分の休憩時間の間に質問をかいていただき、それを集計して分担をきめさせていただいたのちに、ラスト45分間で各演者あるいは筆者がそれを読みながら回答する形式で、Q&Aのコーナーをもたせていただきました。

 食物アレルギーの回避についてのご質問が非常に多かったとおもいます。また、どうやら非専門的な治療をお受けでお困りのかたもおられ、当方からアレルギー科を標榜していてもそれは自由標榜制度のゆえであって専門医を取得している医師のいる施設は非常に少ないこと、日本アレルギー学会の学会員でない医師ですらアレルギー科を標榜している施設があること(これ自体驚くべきことではありますが事実です)、そして「アレルギー専門医」とは例えば注射法の免疫療法や皮内テストを行っていたり、喘息管理にはピークフローなどをもちいていることなどをご回答いたしました。患者さんやご家族の日々の疑問についてのご質問が数々あり、大変に活発な会になったとおもいます。約2時間半があっという間にすぎてしまい、大変有意義な市民講座になったものと考えます。アレルギーに悩む坂戸市民を中心とした患者さんやご家族のみなさんに、少しでも正確な知識をつけていただき、お役に立てたのであればありがたいと考える次第であります。(文責 永田真)

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